あれからどれだけの月日が、そして涙が、流れただろう。
生地を織り上げ、サンプルまで作ったにも関わらず、発表中止でやり直し。
思い出すだけで、胃がキュンと締め付けられる。
けれどあまりヘコんでいられる余裕もなく、
そしてそもそも立ち直りが早い。(仕事の立ち直りはね。でもプライベートは、、、ぴえん)
気を取り直して、糸作りから再スタート。
もうね、現地の工場さんに入って、紡糸の調整から見せてもらったわよ。
そもそもこのガラ紡という糸は、手紡糸よりも調整が難しい。
前にも書いたかもしれないけれど、ガラ紡績機は機械というよりも、カラクリの部類に入る。
きっと、精密という言葉が生まれる前に、作られたんだろう。
このカラクリマシーンを発明した人の名は、臥雲辰致。がうんたっち。
響きがもうね、胡散臭い(笑)
この器械、19世紀後半頃は人気だったみたいだけど、その後ガンガン減っていき、
日本で、世界で、現存するのは数台。そのうち、博物館にいるのが一台。
ファーストロットで紡いでくれた職人さんは数年前に亡くなった。
そして唯一、まともに稼働している工場さんが尾張一宮にある。
これがもう、最高に燃えた。
その器械の仕組みはなかなかに単純。
もちろん動力は電気なんだけれども、(昔は水車だったらしい)
この紡績に必要なものがもう一つ。それは自然のエネルギー。
太陽光でもなく、風力でもなく、地熱でもない。それは、
重力。グラヴィティー。
この筒が登っては落ちる、登っては落ちるを繰り返してるの。芥川の蜘蛛の糸の如くに。
そして糸の番手(細さ)を調整するのは、この重り。
これをどの位置に下げるかで、紡ぐ糸の細さが変わっていく。そこに目盛りは、ない。
そりゃ糸番手を教えてって聞いても濁されるわけで。
だってこれだよ?
まさかの目視(笑)
しかしながらのだからこそで、不規則でエッジィの効いた糸が生まれるのだと思う。
この時々のガツンと入るダマが良い。
この独特の風合いが素晴らしい。
続く