これってなんか、秋冬に発表されたシャツじゃないの?
そうですけども何か?
そもそも季節なんてものは概念ですから。
、、、ごめんなさい。遅くなってごめんなさい。
イタリアの転写プリントも、インドのブルーシルクも、嫌な予感はしてたんだよね。
そしてまんまと遅くなったよね。
けれどもやはり仕上がりは大変良くて、季節も逆にちょうど良くなって、
ここで一つ、諸々をご紹介できればと思います。
初めに案があった。案は服と共にあった。案は服であった。
うん、そうね。それっぽいけど、それで何なのってね。
けれどもヨハネが福音書の初っ端でこれを言うと、皆深く頷くものです。
そんな案、
昔のフレンチワークジャケットが擦り切れてボロボロになって、
それを接いだり、当て布パッチにしたりして、年月を経て、パリの冬。
蚤の市の底冷えのする湿っぽい環境で並んでいたあのジャケット。
まず初めにブルーがありました。
ベースとなる生地は先述のインド手織りのブルーシルク。
シルクプロテインが残ったままの状態で輸入されたものだから、
日本のシルク産地でもあった山梨の加工場でそれを落として、まずは風合いを出す。
胸ポケットに使用しているのは、
アフリカのブルキナファソで手織りされているインディゴ布。
織り巾が狭いので、手縫いで接がれてるのがかわいらしい。
カフスに使用しているのは、
イギリスのブリスベン・モスの太畝コーディロイ。
腰のポケットに使用しているのは、
スキャバル社デッドストックのスーツファブリック。
「SCABAL LONDON - BRUSSELS」っておい、どっちやねん(笑)
けどちゃん正規もんです。
味付けに、日本の誇る
MOKUBAのベルベットリボンと、ベンベルグキュプラ100%のストライプの裏地。
と、まぁ、風合、時代、場所、全てがカオスの中から生まれたのがこの一枚。
そして、このブルーに呼応するかのようにもう一つのアイデアが浮かぶわけです。
はい、天才ですから。
中央アジアの古くからある寺院の出入り口、
廃墟となった豪邸の床、
あるいはそこから助け出されたかのように、
博物館に展示されるアンティークの朽ちかけたカーペット。
そんな稀少ながらも崩れゆく美しいカーペットを撮影し、
それをデジタル加工。そしてそれをイタリアのヴィスコースキュプラに転写。
そう、カオスは続きます。胸焼けしそうでしょう。まだ行くよ。
胸ポケットに使用している生地は、
羊の毛を刈った直後の荒々しい原毛の塊を、
生地で表現しようと試みたパイル生地ウール。
カフスには、イタリアで作ってもらったコットンに、
古着のようなダメージをかけたブロークンベルベット。
腰のポケットには、こちらもイタリアの生地で、
特殊な加工で、中世ヨーロッパのジャカードが焼き焦げたような、
そしてエンボスのような、不思議な生地を使いました。
これでもかと色々な要素、素材を載せ、生まれ落ちたこのシャツ2枚。
僕のこの案に、思いを馳せてくれても、馳せなくても、
「あ〜洋服を着ることが楽しくて仕方がない」
そんな気持ちになってくれたら幸いです。