#97 ANSNAM MODELIST Reversible Zip Blouson Egon Schiele check pattern

Jan 13, 2018

いわゆる、スウィングトップ、ハリントンジャケット、G4などと呼ばれるジップアップブルゾン。実はアンスナムでは一度も作ったことがなかった。なぜか、それは、頭の中でそのシルエットやボリューム感のイメージが湧かなかったから。シンプルが故、非常に難しい。かつ平凡に作るのでは、ウチがやる意味もない。意味がないならやらない、放置。そうして苦手意識を抱えたままに、アンスナムの時は流れ、パリで日本人パタンナーさんと出会うに至る。

実は当初、モッズコートよりも先ず、このジップブルゾンをお願いしたいと頭に浮かんだ。彼ならこのアイテムをどう返球するだろう。表面積が小さく、且つ個性を出すにも制約が多いデザイン、表現する範囲があまりに狭い。
そんなものを、またしても僕は無責任に、投げた。

そうして上がってきたのが、これだ。
見た目、普通。だが、成形されて、パターンの奇妙さがジワリとここに、滲み出てくるものがある。
彼に聞くと、このアイテムの話をした最初から、すぐにボリュームとイメージが湧いていたらしい。ストンと落ちるボックスシルエットながらジャストフィットに近い身頃。それに対し、ボリュームのある袖をはめ込むことで少し粗さを出す。そして、セットインスリーブのアームホールに見せかけて、その実は、ピボットスリーブ構造から展開させており、日常において十二分な運動量を確保している。
まさに、一般社会に紛れ込む変態。そう、一番ヤバいパターン。ぱっと見でわかるヤバさは、実はそんなにヤバくない。本当にヤバいのは身近にいて、話してみたら、よくよく見てみたら、「あ、この人って、、、』というやつ。そう思った時にはすでに遅い、そんな服。そして、そんな彼。

あと、デザイン的なアレンジですが、バックヨークを付けたり、ウエストにサイドストラップを付けたり、エルボーパッチなども可能です。


ちなみに、チェック柄のシアサッカー地を見ると、エゴン=シーレの自画像を思い出す。彼の描く揺らいだ線と、強撚の絹糸で縮んだ生地の揺らぎ方が似ている。そして、彼自身の変態性もこのアイテムにシンクロする。
シルクサッカー地を洗いにかけても、爆発的な風合いが出て面白いかも。

またしてもギリギリに上がった。
二度の停電、千葉さんの電車の遅延を乗り越え、ここに到着。
皆様、ご来店お待ちしております。