フォスター&サン。
1840年創業、ロンドン最古と言われているシューメーカー。
英ロンドンのウエストエンド地区、ジャーミンストリートに店舗を構え、今でもその二階では職人たちが一足一足、木の塊から木型を削りだし、丁寧に丁寧にビスポークシューズを手作りする姿が見える。
イギリスらしい無骨で生真面目な作品とは裏腹に、ここにいる職人たちのリラックスした姿と笑顔が印象強い。それが作品に伝わっているし、その気持ちがお店を充たしている。彼らと会えたから、このシューメーカーを選んだと言っていい。
ま、ウチが今回仕入れるのは既成なので、彼らが縫ってるのじゃないんだけどね(笑)
しかしそのレディメイドも良い出来で、決して彼らは気を緩めていない。
現役の彼らが尊敬して止まない伝説的な木型職人テリー=ムーア氏により造作されたシルエットに合わせ、英国内でベジタブルタンニンされた希少な革を底に用いて、作り込まれてゆく。
オックスフォード型のそのシルエットは、ほんの少しトゥが脹らんでいて、ウエストもしっかり絞られ、気品があるのにキザではない、愛嬌をはらんでいる。
さらに魅入ったのはジョッパーブーツ。8年前に買いそびれて以来、ずっと悔やんでいたタニノ=クリスチーへの遺恨を晴らしてくれた。あそこのマッケイの可憐な作りも素敵だったが、英国領時代のインド駐留騎兵部隊の乗馬ブーツを起源としているこのブーツには、英仕立てのグッドイヤーウェルトに依る頑強さもあった方が筋が通る。そして尚且つ、この流れるフォルム。
と、このメーカーの魅力について話してきたが、なぜか現在、この紳士靴大国である日本には取引先が一件も、ない。
以前某デパートで見たような気がしたが、ない。
もしやまた何かアンタッチャブルな側面があるのかと、不安に駆られていたのだが、ない。
で、私が何度もお店に通ってわかったことが、ある。
この人達、ビジネスを拡げようとする気が、ない。
ただひたすらに、靴作りに没頭している。
ANSNAM ceder (アンスナム シダー)
108-0071
東京都港区白金台5-13-14 2階
tel: 03-6721-9192
info@ansnam.com