#243 ANSNAM チェスターコート

Aug 9, 2025

寡黙な男がコートを羽織り、カフェを出て、通りを歩く。

その背中は雄弁に、

しかしまるで大陸をぬって流れる大河のごとく、ゆったりと豊かに、

その男自身の人生を、その生き様を、語り始める。

冬のグレーの寒空には、こんな映画のワンシーンが心に浮かぶ。

ロングコートは私たちをスクリーンの世界に連れて行ってくれる。

イメージしたのは

「ベルリン 天使の詩」のカシエル(オットー・ザンダー)と、

「レオン」と、「第三の男」。

あと、映画じゃないけれど、ピナ・バウシュの「カフェ ミュラー」。

たっぷりとゆとりを取った寸法で、外套ながら軽やかに。

仕立ては重くなりすぎないよう、かつ浮わつかないよう、十分に気を遣う。

クラシックな仕立てならば、いかようにもできるが、

その匙加減は、なかなかに難しい。

付属資材の選定と、テーラーの仕立て職人さんとの微細なニュアンスのすり合わせ、

試行錯誤と、思考の錯乱。

メンズデザインゆえの、楽しさと苦しみがここに詰まっていると言っていい。

何度もやり直して、辿り着いたその先にある、

それがこのシンプルで大胆、そして複雑で綿密なチェスターコート。

素材についての詳細なストーリーはまた後日に書きたいものだが、どうだろう。

まぁ、とりあえず。

写真のものは、イタリアのヴェネト州で手織りされた、

ファインウールのダブルフェイス生地。

柔らかくて暖かく、ふくらみがあるのに、ドレープがエレガントに流れる。

そのほかにも、同じ工場さんで織り上げた手織りツイードもある。

サイズ感ですが、こればかりは皆さんそれぞれのバランスや好みがあると思います。

今期のおすすめはこのサンプルのバランスですが、

もちろんいつものように、お一人お一人に合わせて、一緒に話しながら、

オーダーメイドで寸法を取り、形を作っていきます。

背肩幅、着丈、身幅、ラペルの大きさ、ポケット位置、肩傾斜など。

全てにおいてメジャーメントしますし、

大幅な変更は、シーチングによる仮縫いもご用意するので、ご心配なく。


アンスナム チェスターコート

¥258,500- (税込)