ANSNAM 〜もう一人のモデリスト〜

Oct 20, 2020

僕は、良い人と出会う星の下に生まれたと言っていい。

本当に、人との恵り合いに巡まれている。

この人との出会いはかれこれ7,8年前に遡る。

そしてここ白金台に居を構えてからは、さんざにお世話になっている。

コノヒトが引いたANSNAMのパターンは数多く、近年だとM-65ジャケットや、

つい先日のアンノウンのブルゾンもそう。I am dorkのパターンは全て引いてもらっているし、

ほんと、枚挙がいとまない。

コノヒトに依頼する時は、既になんとなく自分の中で、イメージのシルエットがある時。

伝達の手段は言葉だったり、写真だったりするのだけれど(僕は基本的にデザイン画は描かない)、

とにかく、非常に話が早い。

互いに昔からファッションで目に留まるポイントが同じで、共通の言語を持ち合わせているからだろう。

とある聴講会に行った時なんかは、偶然にコノヒトとばったり会って、

それはまさに運命的で、危うく恋に落ちるところだったわ。


そんな人のアトリエに行くのは、実は初めて。普段はうちで仮縫いしてるから。

幾ばくかの淡い期待で、私の胸はもうバクバク。

ストイックな私生活を送るコノヒトの仕事場に、ついに足を踏み入れる。

とにかくコノヒトとの会話は尽きない。

「いついつのバレンシアガは〜で」とか、「1998年のギャルソンは〜で好き」などなど、

ファッションに興味のない人、

さらにはファッション大好きだけど理屈はいらないよって人などから見たら、

気持ちが悪いに相違ないのだけれど、まあこちらは楽しいわけ。

そしてこの日は、コノヒトがパターンを研究するために買い集め、所有している、

これらアイコニックなアイテムの数々を見せてもらうが為に来た。

パターンの構造やら、縫製仕様、生地のその種類や目付によるドレープ、

さらには服の内部の副資材の使い方まで、あらゆる角度から研究してた。

二人であーだこーだ言ってる時間、チョー楽しい。

そんなおしゃべりを、通りすがりのウサミさんは、奇異の目で見ていたけど、

恋する二人は止まらない。

こういう研究の数々が、積み重なって、ご自身の引く線に、昇華しているのだろう。

シンプルすぎるアイテムでさえ、どこか詩的な香りのするシルエットになるのだから不思議だ。

パターンってほんと、奥が深い。

そんな人と作った更なる新作が、今週末に登場します。