#43 ANSNAM waistcoat, vest, gilet 

Jul 6, 2017

今回ご紹介するものは、様々な呼称を持つくせに、常に脇役でいる、さらには無用とまで思われている、このヴェストだ。
戦後、近代、現代と、私たちの環境は、生活様式、礼儀作法、言葉や表現の伝達方法、そして身の回りなど、様々な事やものが簡略化されてきた。
趣き、とか所作の間にある空気感というか、そういうのが時代に合わせて、失われたのかもしれない。
けど、まあ私は、美輪明宏ほどには憂いてないけれど。ら抜き言葉で結構だし、「かわいい」の一言の中に集約される微妙なニュアンスもまた、日本語独特の面白さだと思う。(美輪さんは好き。「オーラの泉」毎回観てたし。)

ただ少し残念で、面白みが減ったのかなと思う事は、男性の装ひか。
今や、フェルト帽、傘もしくはステッキなど、軽くコスプレのように思ってしまう程に、それら紳士グッズを見掛けることは少なくなった。ただでさえ装飾性の少ないメンズの装ひ、さらにまたその愉しみ方が狭くなってしまったと云わざるを得ない。
それは今回の、このウエストコートしかり、だ。

このヴェストというものは、いささか暑い。スリーピースで着るには、「華麗なるギャツビー」(1974年版)の如く、真夏のニューヨークで、がっつり汗ダクになる決意がいる。涼しげな顔だが、ロバート=レッドフォードをはじめ、男子は皆明らかに無理をしている、これがこの映画の見所の一つと言っていい(ちなみにもう一つの見所は、ミア=ファローだ。衣装とかちょーかわいい)。紳士たるものそれ位の覚悟を持って、臨んでほしい。

けど、そんなの無理で。我慢はしないし、出来ない私はその脱落の筆頭、切り込み隊長。
だからこの現代、ジレは、組み合わせで着るのではなく、単体で、アウターとして扱うべきだ。
(続く)