その空港に降り立ったのは午前9時。ロンドンからストックホルム、そこで一泊してからまた飛行機に乗り、やっと辿り着いたスウェーデン北部、北極圏まであとわずか。
事前のメールでは、シャトルタクシーを予約してくれたとの事で、人生初、到着口での「Mr. YASUSHI」のボードを持った運転手お出迎えを予想し、期待に胸が膨らんでいた。が、どうだろう。誰もおらぬではないか。一体どうなっておるのじゃ。
仕方なく、シャトルタクシー乗り場へ行ってみると、人々は続々と、それらのタクシーに乗り込み、去って行く。気づけばそこにはもう、老年の太ったおじさんドライバーがぼーっとタバコを燻らす一台のみ。聞いても英語が通じない。
辺りは、白樺の森に2メートルくらい積もっている雪。ガッチガチに凍った、ツルッツルの地面。そして、手元には、電池の切れた携帯。
(昨夜のホテルのコンセント口が、持参した変圧器に、はまらなかったのだ。帰国したらまず、一番最初に、白金台のあの例の、プラチナドンキーに苦情を言うと心に誓った。)
空港のインフォメーションに戻り、この、文字どおり必死の状況を説明。それを冷めた目で聞くキレイな金髪お姉さん。世界一態度が悪いと言っていい、ヨーロッパのこの人種が、私は大嫌いだ。
その後もスッタモンダあったが、グダグダ感満載なので、省く。結局、私はさっきのおじさんドライバーのシャトルタクシーに乗り込むことになる。
白樺の森も最初は神秘的で新鮮だったが、行っても行っても景色は変わらない。それに飽きてきた頃、目的の街に着いて車を降りた。んだけど、多分ここは職人さんがピックアップしてくれる予定の、その指定された待ち合わせのバス停ではない。ここはガソリンスタンドだ。話が違う。またしても嫌な予感がほとばしる。
辺りにバス停らしきところもない。ここはもう、あれだ、迷子の鉄則「ここを動くな」
大体の映画でも、その場所を離れた女は余計なヘマをやらかし、主人公をより一層の困難へと、いざないがちだ。
ひたすらジッと待つこと40分以上。このまま夜を迎えたら、確実に凍死。日の暮れる前に寝床を確保しなければ(まだ昼前だったけど)。そんなrisk managementが頭をよぎった時、
笑顔のお爺ちゃん登場。
<次回に続く>
携帯の電池切れ、精神的にカメラを取り出す余裕なしだった為、写真ありません。