#16 Lombardi フルハンドメイドシャツ 1-2

Feb 3, 2017

ナポリ東海岸、倉庫街の中にあるシャツ工房へ向かう。
時は今から半年前の初夏。
朝の日差しは心地良いが、昼からは暑くなりそうな気配がした。
基本、移動にタクシーは使わないけれど、シャツ工房は港に隣接した辺鄙な地区だ。公共の機関がない。
埃舞い、路面ガタガタ。タクシーの運転荒く、多分ナポリは、交通ルールがない。

市街地を抜けると、海猫の鳴き声が聞こえてくる。路面に目をやると、彼らの糞と消えかけた車線の区別がつかぬ。路肩では、売春婦二人が物憂げに、タバッコを燻らせ立っている。
ここに工房あるのかと心配になるような、閑散とした倉庫街。
薄暗いドアをくぐって、やけに大きいエレベーターを昇ったところに工房があった。

背中の丸いお爺が迎えてくれた。
背ヨークのギャザーや袖のイセ込みが、お爺のその体に沿って美しい。
ああ、ここに来て良かったと思った。
そもそもここのシャツメーカー、日本でほとんど知れていないし、現在、取り扱いもない。だが、今まで出会ってきたフランスのデザイナーや、イタリアのジャケット職人そしてパンツ職人たち(のちにネクタイ職人も顧客の一人だったとわかる)が、まず第一にこのLombardi爺を薦めた。


英語のしゃべれないお爺は即座に息子を呼び出し、話し合いが始まった。
型紙、体型補正、生地の選定、襟の形、カフス幅など。
話し合いは長時間に渡る。ここまでつぶさに型紙について入り込み、仕様変更を求める顧客は確かに少ないだろう。しかし、こうしてANSNAM ceder 独自のものは作られるし、仕入れられる。そうでなければこの店をやる意味がない。
昼に近づき、気温は上がる。差し出された水は、緩い。


すべての話しが済んだ頃、12時を過ぎていた。
お爺の息子「この後、どこに行くの?タクシー呼ぼうか?」
中野「郊外のネクタイ工場に行くよ」
お爺「お、ワシも夕方にシャツを届けに行くんじゃよ」
中野「え!知り合いすか?奇遇ですねぇ。じゃ、僕渡しましょうか?」
お爺「いや、自分で渡したいから大丈夫じゃよ。グラッツェね」
中野「じゃあタクシーお願いしていいですか?あ、あと腹減ったからこの辺に食堂ありませんか?」
お爺「あぁ、なら角の食堂のカルツォーネがオススメじゃよ。ネクタイ工場には、少し遅れるかもと電話しといてやろうぞな」
お爺の息子「食べ終わる頃にタクシー来てもらえばいいかな?」
中野「グラッツェミーレ!」


次回、シャツの詳細。
明日2月4日(土曜)からオーダー展開します。


ANSNAM ceder (アンスナム シダー)
108-0071
東京都港区白金台5-13-14 2階
tel: 03-6721-9192
info@ansnam.com
定休日:火曜、水曜
営業時間:12時〜19時