オープンして間もなく1ヶ月。
あっという間で驚く。こうして時は過ぎ、季節は変わり、年を越し、いつしか私達は灰へと帰すのだろう。と、思いを馳せるその前に、目の前の納期。去年、いや、一昨年に頂いたオーダーもある。本当ごめんなさい。週明けにご連絡します。誠に申し訳ございません。
と、さてここで、幾つか小物を紹介。
オープン明けの「お祝儀買い」アイテムとして、ヤらしくレジ横に並べようとしたけれど(そもそもレジがないけれど)、どれもが尖り過ぎていて、結構な金額になっているものばかりだった。(何か買おうとしてくれる、そのお気持ちだけで嬉しかったです)
まずは、もう今年で4期目になる、ベビーカシミア手織りマフラー。
初めて知る方もいると思うので、改めてご紹介を。
製作者は、長野の草木染色工場長。手織りのプロフェッショナルではありません。趣味です。完全な。ちょっと手の空いた時間に、余ったベビーカシミアの糸をこっそり自分の好きな色に。それをちょっと手の空いた時間に、手織りして、季節になったら送ってくれる。そう、まるで田舎のおじいちゃん。
私はデザイナーで、本来なら私が思う「今年の色」的なものを熟考し、皆様にご提案すべく職人さんと相談し作り込んでいくのだけれど、この方だけは違いまして。完全にお任せ。色指定さえさせてもらえない。
この方に関してはこれで良し。色彩感覚に於いては負ける。アルチザン育ちの私はどうせモノトーンですよ、えぇ。私の配色列に並ばない、その組み合わせの妙は素晴らしい。一瞬躊躇うものも、首に巻くと調和するから不思議だ。そして更に、混紡の7色使いや、単色と思わせてのグラデーションなど文字通り多彩な技を繰り出す。
午前の青みがかった光。午後の黄み。夕の朱。夜の人工灯。それぞれの時間によってマフラーの色味も変化します。
ちなむと、今、店頭に掛けてある状態が一番普通。これを10回ほど使用して貰えば、カシミアの繊維がふわりと立ち上がり、より滑かに、より暖かく、更なる成長を遂げますのでご期待を。その一枚のためだけに染色し、緯糸を渡しながら時間と空気も織り込み、嵩を持たせる。
送られてくるストールの中には、極端にサイズの小さいものや、かわいいパステルピンク色などの処理に難航するものも混じってて正直ツラい。しかし、自分の想像を越えるものに出会える喜び、これを毎年楽しみにしてる。
ああ、おばあちゃんの、ほうとうが食べたい。
*当店オープンということで工場長が張り切って20枚くらい織ってくれました。が、本当に同じものは一枚もありませんので、ご注意を。