#155 ANSNAM ルーリーパンツ解説

May 11, 2019

通常、パンツの型紙は、左右合わせて4パーツという少ない構造線の中で、歩く座るという基本動作を妨げない機能性を保持しつつ、いかに個性を表現し、立体デザインを彫るか。それがパンツ作りの難しいところであり、楽しいところである。
そんなパンツの型紙作りで、僕が重要だと思っているのは、腰の「スワリ」。その下の、足のシルエットなんかは一番目立つところではあるけれど、正直あまり問題ではなく、どうにでもなる。しかし、腰まわりはそのパターン次第で、全体の雰囲気が変わり、布の落ち方つまりドレープも変わる。
と、ウヤウヤしく書いたけど、実はそれほど真面目にパンツの型紙は突き詰めてはいない。だって大変なんだもん。パンドラの箱だよ。深い。

腕の血管がセクシー。男らしー。

今回のルーリーパンツは、4パーツよりもさらに少なく、昔の軍モノのセーラーパンツの構造と同じく、脇線のない一枚パーツでぐるっと片足を包んでます。こうすると腰にユガミが現れて、さらに地の目(生地の織り方向)がネジれる。それをそのままに、展開しちゃう、無理やりに。理論的構造?何それ知らない。

腰を落ち着けさせた代わりに、その影響でシルエットは不安定になる。
足のドレープが斜めに入り、なんとなくブーツカットの様相が表れたり、全体的に生地の分量が前のめりになったり。裾を長めにワンクッション入れても表情が変わるし、アンクル丈にすると急に、すんっと飄々とした雰囲気にもなる。つまり、表情の取りとめがつかない、まさにジョン=ルーリーなパンツが仕上がるというわけ。

昨日の写真と同じ型紙だけど、ここまで表情変わります。
昨日のはイタリアの生地屋さんの倉庫から引っ張り出したもので、軽くて少しバルキーな張りのあるコットンヘリンボーン。
今日のはアンスナム定番の綿ギャバ。こちらの方がドレープが出ますね。
夏に向けてウール平織りのトロピカルなんかもいいし、フィレンツェで見つけてきたヴィンテージのスーツ地なんかでもいいし。京都の黒染めリネンのヘリンボーンも、あと一本くらい残ってますし。サイズを2サイズくらいアップしてバサバサさせてもいいし。逆にちょっとチャージアップになるけど、細身に作るのもアリだし。
よろしければし。