僕はいわゆる職人ではない。フィッティングはするけど、縫製はしないし、「ウチの形はこれだ、嫌んやら他当たってくれぃ」っていうような固有のシルエットがあるわけでもない。お客さんの好みや、作りたい雰囲気に合わせて、いかようにも形を変えていく。
若きサンローランの着ていたような生地が手に入れば、その時代風のフレンチに、少しブリティッシュ混ぜて。
漫画「ボーダー」に出てくる感じでやさぐれたイメージ、けど生地は少し自然な光沢があって、動いた時のドレープがきれいに出るように。
いやもう、ロック、黒の細身。
ヴィンテージの重みのある生地だけど、織り柄にニュアンスがあるから、ダブルなんだけど柔らかさがありつつフィットしてる感じ。
とかとか。
みんながそれぞれ好き勝手なことを思い浮かべたり、こちらからのイメージで形作ったり、深夜に急に心変わりしたり。この時間が楽しいわけ。言葉にしなくても大丈夫。映画とか、漫画、絵画、本からの描写だっていい。そのニュアンスから形を起こしていく。もうね、互いにいい加減でいい。
けれどこのセッションがあるからこその、ウチのビスポークだと思う。なんとなく、最終的に良い加減になって上手くいく。そして、ちゃんとしっかり弊社ANSNAMの匂いのあるスーツになってるから、我ながらに不思議。なんでだろ(笑)
さらに昔を遡るとあのロン毛、あれはニセ明。って違うわ!