#31 ヨーロッパ Meet the Meats

Apr 20, 2017

どうせもう止めるんだろうと思われている旅の話、あえて続けてみる。





パリののち、次はフィレンツェに飛ぶ。
二夜連続のビステッカで鋭気を養う。やはり、海外出張で必要なのは鋭気よ。パリのフォー、ナポリのマルゲリータと同じく、ヨーロッパ行ったら絶対に、執拗に求める食の一つ。
このビステッカ・アッラ・フィオレンティーナは、若いキアーナ牛を一ヶ月かけて血抜きをした、いわゆる熟成肉のTボーンステーキで、炭火でじっくり、だけどレア。味付けは塩胡椒とオリーブオイルというシンプルこの上無いのだが、これが実にうまい。霜降りA5ランクじゅわぁとかじゃないよ。口の中いっぱいに肉、頬張るの、想像してみ。

1日目はとある靴職人さんとその相方さんとで街はずれのお店。日本のドラマの話に花が咲く。(この時、まだ私はカルテット最終話を観ておらず、その話をできなかったことが悔やまれる。)前菜で食べたトリュフのパスタもうまかった。食後は少し歩いて、ポンテ・ヴェッキオを眺めながらアルノ川を渡る。今や見慣れたその風景だが、いつ何度来ても見惚れてしまう。ジェラートをこぼさないように気をつけながら。
そしてRepubicca広場に面した1733年創業のカフェGILLIに入り、お二人オススメのcaffe al ginsengを飲む。高麗人参から作られているそうで、妙にうまい。胃が落ち着き、酔いも和み、いい気分。


2日目は、とある鞄職人さんと、とある工芸職人さんとで。デカイ二人。ビステッカが絵になる二人。
街中の老舗で、昨日のビステッカとはまた違う。どちらも、たまらんのだよ。こちらでは、この瞬間が旬の、青々しいグリンピースのパスタを前菜に。


こうして、職人さんと会える街では積極的にご飯へ誘わせて頂く。ビステッカが大きすぎて一人では食べきれない、というのが一つの大きな理由。そしてボトルのワイン。これも一人じゃ飲みきれないし。やはり本場のワインは違うのだ。うまいのだ。高い青空、健やかな空気。ワインが合うわけ。そして何より一番に楽しいのは、職人さんたちとの会話である。
年齢も近い、育った境遇も近い、価値観も近い、なんか色々近いのだ。そして、時々やってくる私は、あくまでアウトサイダーであり、シガラミもなく、たぶん愚痴も言いやすいのだと勝手に思う。彼らと下らない話をしたり、物作り、クリエーションの話をするのは本当に楽しく、素晴らしい時間であり、それを共有させてもらっているのが有難い。
その中から次の発展が芽生えたり、育ったり、飲み過ぎて朝になったら忘れたり。したり。



この一年間で、これともうちょっと食べた。
ビステッカの前菜も肉。