We ANSNAM

Feb 15, 2019

その時が来るのは、思うよりも早かった。
大阪のジャケット職人さんが引退する事になりました。

初めてお会いしたのは2005年位だったから、かれこれ14年もお世話になった。その人が居なければ、このアンスナムは無かったと言っていい。それ程までに、うちの根幹を支えてくれた。
ハーフハンドメイドとはいえ、ラペルのハ刺しとボタンホールをミシンで処理するくらいで、工程時間のほぼ9割がハンド。自宅のアトリエで丸縫い。時折ずれるボタン付け位置。左のはしご掛けだけがなぜかいつも荒くて、胸のダーツがなぜかいつもエクボになる。そんな、ナポリの職人さんのようなスキのある雰囲気(よく言えばだけど笑)が僕はスキだった。文句を言いながらも、高密度のコットンや、ウールと裂織の手織りなど難しい生地だろうと、うまく仕立て上げてくれた。
その人が、いなくなる。

このアンスナムほどに、職人さんたちに依存しているブランドもなかろうと思う。ずっと僕一人で続けてると思われるけど、その実は、勝手に彼ら職人さんたちを巻き込み、勝手にチームだと思って、物作りを進めてきた。彼らでなければ、彼らとだから作れた、そんな服ばかりだったと思う(もう中野くん意味がわからないよ、と離れていった職人さんも多数だったけどねん)。兎も角も、全ては人だ。

引退の報告を受け、そんな14年間の、スギ去りし日に思いを寄せて、型紙などを引いていた。すると自然に涙と鼻水が流れてて、それに気付いたあとから追って、その感情を自覚する。さみしい。幼い頃の夕方に一人残った公園で、ひぐらしが鳴く切ない感じ。あれ。

受注の締め切りは3月3日(日曜)まで。しかし、受注数量に限りがありますので、お早めに。最後の仕事。とくと。
価格:ジャケット¥10万〜。スーツ¥15万〜。
納品:3月末(もう他の仕事は打ち切ったから早いみたい)



その日の夜のニュースにて、スギ花粉が飛び始めたと聞きました。