否が応でも、否応なしに、
自分の意志の選択をする権利さえもないがしろにされ、
こうして荒野を歩いている。
それは、前日くらいから嫌な予感として、背筋にヒタリと垂れるから、
事前に、そうはなるまいと準備を周到に進め、当日を迎える。
これだけ世界中を旅して回ったのだから、
多少はそういった問題を事前に回避する術は知っている。はずだった。
しかし、荒野は俺を呼んでいる。正確には、引きずり込もうとしている。
ガルガンチュアの事象の地平線の如く、その引力には抗いようもない。
旅の難易度で言ったら、特級レベルの国。
そう、それはイタリア、お前だコノヤロウ。
電車やバスといった公共交通機関、これの精度がだいたい、50%くらい。
インドだって85%以上の精度だぜ。
イタリアで電車とバスを乗り継ぐ、だなんて、ほぼ不可能に近い。
「ったくよぉ、若い頃は散々な目にあったぜ。ふふ。」
と今までの経験値を踏まえて、余裕をかますと、
彼らはその上を行く。天上人。そう、神だ。
時刻表より遅れる、ではなく、ない。
1日に5本のバス。
「それに乗り遅れると次は3時間後だ、絶対それに乗らなきゃ」
のバスが来ない。存在が、消える。
ちなむと、なんで俺がこうした罠にかかってしまうかと言うと、
まず、バスや電車の車体が、新しくてキレイでおしゃれなの。
そして冷房もガンガン効いてる。
しかも切符もsuicaもいらないの。クレジットカードで支払いOKなのよ。
さらには、バス停の電光掲示板に、「次のバスまであと8分」とか出るんだよ。
そんなん、油断するに決まってんじゃん。
で、1時間待っても来ない。そこでやっと気づく。
あ、これ、暇を持て余した神々の遊びだ!
そしてこうして、荒野を歩くこととなる。
幾多の苦難を乗り越えて、辿り着いた先で出会う生地屋さん。
いい店は稀で、無駄足になることの方が多かったりするけれど、
いい生地と出会えた時の喜びと、それを服に仕立てた時の興奮が、
この俺を動かす。
マメが潰れて血だらけの足で、一歩、また一歩と、乾いた大地を踏み締めて、
ゆっくりと、しかし確実に、前に進んでゆけるのだ。
そんな感じで見つけてきたデッドストックのシャツ生地たちがありまして、
8月23日〜31日まで京都のPARKさんでシャツのオーダー会します。
最初の二日間は僕もいます。
9月の予定は未定です。東京でも何らかのやるかな。やろうかな。
きっとね。あったら言えるかな。まぶた閉じて浮かべているよ。
真夏のピークが去るの、まだですかね?