#238 ANSNAM パッチワークシャツ2種

Apr 20, 2025

これってなんか、秋冬に発表されたシャツじゃないの?

そうですけども何か?

そもそも季節なんてものは概念ですから。


、、、ごめんなさい。遅くなってごめんなさい。


イタリアの転写プリントも、インドのブルーシルクも、嫌な予感はしてたんだよね。

そしてまんまと遅くなったよね。


けれどもやはり仕上がりは大変良くて、季節も逆にちょうど良くなって、

ここで一つ、諸々をご紹介できればと思います。

初めに案があった。案は服と共にあった。案は服であった。

うん、そうね。それっぽいけど、それで何なのってね。

けれどもヨハネが福音書の初っ端でこれを言うと、皆深く頷くものです。


そんな案、

昔のフレンチワークジャケットが擦り切れてボロボロになって、

それを接いだり、当て布パッチにしたりして、年月を経て、パリの冬。

蚤の市の底冷えのする湿っぽい環境で並んでいたあのジャケット。

まず初めにブルーがありました。

ベースとなる生地は先述のインド手織りのブルーシルク。

シルクプロテインが残ったままの状態で輸入されたものだから、

日本のシルク産地でもあった山梨の加工場でそれを落として、まずは風合いを出す。

胸ポケットに使用しているのは、

アフリカのブルキナファソで手織りされているインディゴ布。

織り巾が狭いので、手縫いで接がれてるのがかわいらしい。

カフスに使用しているのは、

イギリスのブリスベン・モスの太畝コーディロイ。

腰のポケットに使用しているのは、

スキャバル社デッドストックのスーツファブリック。

「SCABAL LONDON - BRUSSELS」っておい、どっちやねん(笑)

けどちゃん正規もんです。

味付けに、日本の誇る

MOKUBAのベルベットリボンと、ベンベルグキュプラ100%のストライプの裏地。


と、まぁ、風合、時代、場所、全てがカオスの中から生まれたのがこの一枚。

そして、このブルーに呼応するかのようにもう一つのアイデアが浮かぶわけです。

はい、天才ですから。


中央アジアの古くからある寺院の出入り口、

廃墟となった豪邸の床、

あるいはそこから助け出されたかのように、

博物館に展示されるアンティークの朽ちかけたカーペット。

そんな稀少ながらも崩れゆく美しいカーペットを撮影し、

それをデジタル加工。そしてそれをイタリアのヴィスコースキュプラに転写。

そう、カオスは続きます。胸焼けしそうでしょう。まだ行くよ。

胸ポケットに使用している生地は、

羊の毛を刈った直後の荒々しい原毛の塊を、

生地で表現しようと試みたパイル生地ウール。

カフスには、イタリアで作ってもらったコットンに、

古着のようなダメージをかけたブロークンベルベット。

腰のポケットには、こちらもイタリアの生地で、

特殊な加工で、中世ヨーロッパのジャカードが焼き焦げたような、

そしてエンボスのような、不思議な生地を使いました。

これでもかと色々な要素、素材を載せ、生まれ落ちたこのシャツ2枚。

僕のこの案に、思いを馳せてくれても、馳せなくても、

「あ〜洋服を着ることが楽しくて仕方がない」

そんな気持ちになってくれたら幸いです。