#173 ANSNAM T-shirts 「急」

Aug 27, 2020

至高の贅の贅を極めた、上がりの一品というべきか、
いや、ジョークグッズというべきか。
はたまた、洋服表現による概念のデザインというべきか。

だってTシャツだぜ。

その一言から始まった、今回の製作過程において、
常に、試行錯誤と自問自答、四面楚歌で四苦八苦。yo-yo
俺のなかのエミネムが、蠢いていた。

最初は、テキトーに商社さんの生地を引いて、サクッと作って、
適当な時期に適当な価格で、サラッと着てもらおうと思ってた。

でも、やっぱり納得行かなくて。
ファーストピックとか、熟成とか、もはや意味わかんないし、(あウチも熟成カシミアやってたわ笑)
いろんな付加価値もよく分かんなくて。
こんなの俺が作んなくても世にあんじゃん、
とスタート地点に戻ったり。
もはや見た事ないTシャツ生地なんてほぼ無くね?
とやる気を無くしてみたり。
そんな思春期、コロナの夏。


そしたら、ヤス君、ひらめいちゃった。
いっその事、すでに世にある糸同士を合わせて、まだ世にない新しい絲糸を作ろう。


糸の取り寄せについては「序」編の通り。
ま、大変だったけど、そーゆーの見せないところがイケメンだよね〜。

で、取り寄せたのは
西インド諸島のカリブ海シーアイランドコットン 
エジプトのGIZA45ファイナルストック
インドのラキシマンスヴィンゴールド

僕が思う、世界の手摘み綿の最強クラス。

シーアイランドコットンは、海島綿とも書いて、アメリカでも栽培始まったけど、これはその本家本元。

GIZA45は、つい一昨年くらいに商社さんが無駄にばら撒いちゃって、
ブランド価値は落とすわ、在庫はなくすわ、で大変な目にあったやつ。
45っていう数字は、品種改良を重ねに重ねたその証。
今でもその品種改良は続けられていて、今やGIZA93まであるが、45を超えられたとの情報は入っていない。
近年の環境変化、土壌汚染など(リアルにインターステラーのやつ)により、既にGIZA45の栽培はできなくなり、
僕の手元にある糸と、あとほんの少しだけがスイスの紡績工場にあるそうだ。

そして最後にラキシマンスヴィンゴールド。今やスヴィンなどそんな珍しいものではないのかもしれないが、
初期からその開発と展開を支えてきた、大正紡績さんのところの糸を使う。


他にもいい銘柄って沢山あるんだけど、
手摘みがよかったし、超長綿がよかったし、新疆は誰が作ってるかわからないし、
謎のルールのある商社が絡んでるのはヤダったし。
あ、それぞれの糸の特性については、ググってくださいね。


というわけで、世界中から取り寄せたこの糸達。
すでにこの段階で完成された糸であり、本来ならそのまま編んだり織ったりするべき者達。
それらを、もう一度、紡ぎ撚る。
120番手双糸や、140番手双糸などのそれぞれ不揃いを、
三つ巴の三幅対。無理やりのトリニティ。三位一体のアーメン。
そして最終的に20番手ほどの一本の糸になる。
(番手の数字が小さくなるほど、糸は太くなります)


どんな糸になるのか、どんな生地になるのか、
職人さんさえもわからない状況の中、事は進む。編みの工程へ。
この時すでに夏は始まっていた。



だが、その歩みは遅かった。
なぜなら、吊り編みだから。
1日5m。

この大量生産スピード勝負の世界線で、まさかの一目づつ編むやつ。
1920年製造の機械を用いて、糸にストレスをかける事なく、ゆっくり編み立てる。

ちなむと、現在の最新機械は一度に90目編むんですってよ〜奥さん。
しかも回転速度も早いから、吊り編みの何百倍も生産能力があるらしいのよ〜。
嫌な時代よね〜、全くぅ〜。

でも別に、早い分ならそれで良くね?って思う。
見た目も一緒なら、早い安いでいっしょ。ウェイ。バイブスいと上がりけり〜。

けれど、違うから、こうしてスケジュールを吹っ飛ばして、
吊り編み機に糸掛けてます。
糸はしっかりと編み込まれ、ふくらみを持ち、その編み目は丸い。
それにより、生地のキックバック(弾性っていうのかな?伸ばしても、あとから戻るやつ)は高まり、
洗濯してもヨレない、むしろ風合いが良くなる。
その糸の持つ個性が十分に発揮される。



そんなわけで、

そろそろ読むのに飽きてきたでしょう?
僕も書くのに飽きました。

というわけで、終わります。
次回、明日のブログでは、実物の写真とか上げます。
(サンプルまだない。明日到着なの)