#173 ANSNAM T-shirt 「序」

Tシャツ。
今まで、お客さん達のこの要望を、僕はヘラヘラとやり過ごしてきた。

Tシャツというアイテムは、肌に接するが為に、
クリエーションの深度が浅く、素材の追求をするにも、すぐに底が見えるわけで、
自分にとってのそれは、つまるものではなかった。
基本的に、莫大小（メリヤス）メーカーさんの糸開発に頼る比も大きくて、
こちら側の創造の余地は、狭かったと言っていい。

とは言え、突飛な珍しい素材を見つけても、
股間以外も敏感な、僕の柔肌ゆるふわボディでは、チクチクしちゃうの。
汗かくと。
そう、チュクチュクしちゃうの。

故に、綿100%が原則となる。
そうしたならば、ヘインズ着てればいいじゃない。
パンがなければ、ケーキを食べればいいじゃない。

と、あの頃の僕は、そう思っていたんだ。



＜続く＞

(これから糸作りだから、発表は多分、6月です。えへ)