#160 ANSNAM Modelist Leather riders jacket オーダー会

Aug 2, 2019

明日からライダースのオーダー会です。
TS氏も来日し、先ほど弊社にお越し頂きました。が、時差ボケに伴い、ゴロンと横になった途端に寝息を立てるという、寝るなコラ。
そんな僕も帰国して1週間なのに、全然に時差ボケが治っておらず、一体この週末は二人共どうなるんだろ、とボ〜〜っと思い浮かんでは霧散し消えています。
さて、先日の仮縫いを経て、修正パターンを基にセカンドサンプルが完成しました。いいよ。攻めたのが効いたよ。デザイン的には、ファスナーなどディテール多めに盛り込んで、オーダーのイメージの湧きやすいバリエーションに仕立てました。

そして、肝心の革ですが、今回のヨーロッパ出張で見つけてきたものが色々あります。

まずはフランスからのカーフ。セカンドサンプルのシングルは、こちらの革を使用しました。ハーフのクロム鞣しで、非常に柔らかくきめ細かな革です。完全に、あの、パリのメゾンの香り高い、あの、革の感じ。

パリのギリギリ市内の、ホッタテの倉庫から見つけてきました。もちろん冷房などもなく、本当に汗だくの中での探索で、これは確かフランス着陸から14時間後だ。この旅、先が思いやられる、そんな予感がバシバシと。
この時、サンプル用とはいえ5匹ほど購入し、格安スーパーの袋に入れてもらい、倉庫を後にしました。ちなむとそれから、その袋をぶら提げて、汗浸み渡るTシャツのまま、シャルべに行った。相手にされず、食い下がるもその値段を見て引き下がる(泣)。なんだよあれ。


次はイギリス。イングランド北部の山羊。タレクの紹介。たまたまロンドン市内に職人さんが来てたから、ソーホーのクラブでミーティング。イケイケのクラブではなく、会員制の倶楽部って感じのやつです。いわゆるコワーキングスペースに近い使われ方をしてるらしいんだけど、渋いバーはあるし、専用のチャペルがあったり、秘密結社感がハンパない。



で、職人さんはまだ若いし、会社自体の設立もまだ日が浅い。元々は広告代理店やってたって。そんな彼がなぜタンナーに?

理由が最高。「僕の実家、畜産やってて、山羊とかめっちゃいるの。」
原皮が新鮮そのもの、フレッシュ。いいもの厳選。こんなに強いものはない。
そんな最高の環境下でするベジタブルタンニング。経年変化したサンプルのバッグを見せてもらったんだけど、だんだんと光沢が増すし(人間の皮脂だけで十分)、色味も緑がかったかのように変化してた。シボ入りのゴート。ワイルドだろ。これもまた、良さそう。



そしてイタリアはサンタクローチェ。この地方独特の、昔ながらのバケッタ製法(渋栗を主原料としたフルベジタブルのタンニン鞣し)で、ホースやカンガルー。さらには独自の技術によって開発されたアルビノ。白いままでもいいし、この白から製品染めの雰囲気が出る風合いにしてもいい。楽しみが広がる。ぐふふ。

ところで今回、初めてのサンタクローチェだったんだけれども、想像してた街の風景と全然違ってた。勝手なイメージで、古ぼけた土壁レンガの街並みに、家族総出で地面に埋めた壺をかき混ぜ、代々伝わる鞣しの歌を唄って、肉体労働の辛さ忘れ去るヨイトマケ、みたいな。
全然違った(笑)。ただの工場団地。味も素っ気もありゃしない。トラクターガンガン走って土埃。


が、よく見るとその荷台に、原皮が山のように積まれて運ばれている。後で聞くところによると、サンタクローチェのその特産の強みは、その新鮮な原皮の運搬にあるらしい。部位を選り分け、小回りのきく運搬。
過去の戦争しかり、物流を制するものが世界を制す、的な。その生産の数量も多いから、いい原皮が優先的に供給される。そして先述の通り、新鮮な状態で、鞣しの工程に入れる。

それに対し、日本のタンナーの弱みはそこにあるのだという。生産量の少ない状況でかつ、遠方から海路に乗って塩漬けの状態で輸入される。しかも熱帯の地域をくぐりながら。たとえ同じ製法をもってしても、スタートの段階で違う。
あ、けど、日本でも豚皮や鹿皮は、新鮮なものが手に入るか、輸出もしてるらしいし。じゃなんでだろ。わかんないや(笑)somethingか、多分。




さて、最後にグイディについて。
イタリアの皮革関係の人たちと話して、色々教えてもらった。グイディの製法が他とは明らかに違っていて、油の含有率が他のタンナーの比ではないこと。使用する原皮が最高のクオリティだということ。アルティザンブランドが使用することで、僕らの間で有名になったタンナーだけど、その実は、ずっと昔からしっかり高級メゾンに卸しており、決してイロモノ系だけの御用達ではない。今から13年前かな、初めて訪れた際、当時の町工場のような事務所の、FAXの山からチラッと見えた錚々たるメゾンのメンツたるや。
それ故、上品に美しく見せようと思えば、そう見えるし、その逆もまた然りで、アルティザナルな感覚を水面下で泳がす事もできる。
グイディのベイビーカーフ独特の、ゴムのような無機質感も、堪んないよね。


と、色々革を見てきて、品質のあれこれを聞いて、感じたこと。それは、雰囲気がいいものが最上であり、最良。クオリティとかあんまり気にしなくていいです(笑)。大体の雰囲気のいい革は、クオリティの上に成り立ってる。そしてそれ、しっかり選んできたから、その後の経年変化も期待していいですよ。
だから気兼ねなく、ご自身の好きなテイストの革を選んでください。

ご来店、お待ちしてます。
あ、そうそう。この週末も暑いだろうけど、いつものように飲み物が出せません。何か飲みたければご自身でご持参ください。すみません。

では。
あ、そうそう。「なつぞら」がめっちゃ面白いの。まだ86話とかで、3週間くらい遅れてるけど、今頑張って追いつこうとしてる。北海道編も大好きだったけど、アニメーション制作のこととか、モノ作りをしっかり掘り下げてて、すごく興味深い。けれど、一番お気に入りの夕見子ちゃんの登場回数が激減しており、そこだけが不満です。以上です。