#99 Sebastian Tarek Shoemaker Trunk Show

Jan 19, 2018

何もかもを言葉の中で表現し、言葉でカテゴライズし、整理する。頭で理解されたものは、その安全圏の中で吟味され、ようやく受け入れられる。
では、カテゴライズできず、かつ言葉でも表現できないものは。それらに対しては、どうしても戸惑ってしまうし、畏怖を感じたりしてしまう。

彼の靴はそんな対象の一つなのかもしれない。前述の通り、老舗の英国紳士靴店からの依頼を受けたり、ロンドンのロイヤル カレッジ オブ アートで講師を務めたり、いわゆるクラシックなドレスシューズの製作を手がけている。かたや、ご近所付き合いで時々、too goodやP.R.Patterson、hostemの手伝いもしてたり。
そして、彼セバスチャン自身の作品は、また別のところにいる。それらのクラシックやアルチザン系という枠内にいない。だから困る。綿密に構築されたクオリティと、ほとばしる感性の構造。こんな靴があっただろうか。カテゴライズができない。できもはん。
ま、本当は、こういう作品に対して言葉で表現すること自体が野暮で。"don't think, just feel"というやつだ。

そんな彼の持ち味をあえて言葉で分析するなら(だってこれブログだもの、野暮とはいえ言葉で伝えなきゃね)、頑なにハンドソーンウェルト製法で、エッジィの効いたフィドルバック、しっかりとした作り。それに対して素材は、主にイギリス国内のベジタブルタンニンで鞣された革を使っている。これらは非常に特徴的な革ばかりで、様々な革を彼は一枚単位で手に入れているようだ。聞けば、気になったタンナーには直接足を運び、倉庫から生産現場まで見て回り、面白そうなものを見つけては、着分で分けてもらったり、実験段階(もしくは実験して失敗したもの、けれどそこに美しさを見出したもの)のカオスを掻き分けて。うん、そそ。やり方、ウチとめっちゃ似てるでごわす。

というわけで、素材は出会いです。このタイミングでしか出会えない革、もう二度と出会えない革、多数あります。僕がオーダーしたのも、ちょうど訪ねたその日に届いた革。
ちなむと今回の来日に合わせて、その僕の仮縫いもお願いしているから、タイミングよければその風景見れます。うふふ。あぁ、楽しみすぎる。

あ、あと、普通に綺麗なボックスカーフなども用意してくれるから、荒々しい仕上げにしつつ、アッパーはそれを隠した澄まし顔、というのも一興。もしくは普段アウトワーカーとして作っている老舗の靴のようにちゃんと綺麗に作るんだけど、ほんのり彼の匂いを漂わす、のもこれまた一興。あと、エグい革なのにスマートに作るのも、こぴっと良いじゃんねぇ。

彼のインスタグラムを見ると、今までの革たちを色々見れるので、ちょっと覗いてみて欲しい。合わせて色んな型のオーダー靴もあるから参考にしてみて。
https://www.instagram.com/sebastiantarek/
どう作るにしても、着るものを選ばない靴になると思う。週末のカジュアルの時はもちろん、平日普段のスーツの時に、足元だけ反逆。いや、ルールギリギリの範囲内、文脈の延長線上での紳士的反逆。
 明日から。