#74 渚の手前でランデヴー

Oct 23, 2017

多分僕たちは、付き合った方がいいんだと思う。いや、付き合うべきだ。だってもう、とうに僕たちは互いに、恋に落ちているんだから。むしろ恋に落ちない方がおかしい位に、恋愛ドラマを越える筋書き。シェイクスピアだって驚きの展開、ザッツラーイ。

中込憲太郎氏、その人である。
私たちは幾度となく、道で会う。ばったりと。会いたいと思った時に、偶然会える。目の前を歩いてるの。本人。今、私がこうして店をやっていられるのも、彼と巡り会えたからと言っていい。

先日のパリ、そこでも私たちはこの運命の存在を、あらためて感じる事となる。
郊外、CDG空港近くの展示会場で行われる世界最大の生地見本市「プルミエールビジョン」。どこかで会えるといいですね、とメールのやり取りをしていた。
初めて訪れるそのプルミエールビジョンの会場は、ものすごい広さ。さて着いて、中込さんにメールしようとしたその矢先、目の前を歩いてるの。本人。
けどもう何度もこうしてバッタリ出会ってるから、お互いのリアクションは小さめ。会場の周り方のコツを聞いて、その後は別行動。
4時間ほど見て回り、その会場の広さに辟易。ヘトヘトでお腹ペコペコ。帰りの電車で食べようと、ラデュレの出店でパン オ ショコラを買い、駅に向かうその矢先、目の前を歩いてるの。本人。
さすがにキュンときた。例えるなら、東京ディズニーランドの行きと帰りにゲートでバッタリ、くらいの確率。エレクトリカルパレードまで観るかどうかも、お互い言ってないのに。

パリ市内に向かう電車の中で、私は先ほどのチョコクロワッサンを食べるのだが、パンの屑がこぼれるのが恥ずかしい。うつむきながら食べていた。そんな私の気持ちなど露知らず、彼はいろんな話をしてくれた。端々に、私に気があるような含みを持たせて。


それから三日後のマジックアワー、誰そ彼時、君の名は。
中込さんはインスタグラムで、その刻に、パリのサクレ・クール寺院を撮りアップした。ちょうどほぼその時同くして、僕はフィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂で、ほぼ同じ構図の写真を撮っている。
ほらね、つまりはそういうこと。



今回のトランクショーにあたり、パリでのロケ撮影から、店での接客にもご協力いただいたコヒーレンス、クリエイティブディレクターの中込さんをはじめ、スタッフの方々、そして、お足元の悪い中、ご来店頂きました皆様にお礼申し上げます。