#07 MANNAS

Nov 12, 2016

オープンして1週間が経ちました。
早速お越しいただいたお客様、誠にありがとうございました。
FUMIYA HIRANOのオーダー会も、盛況のうちに幕を閉じ、沢山のご注文ありがとうございました。来春の仮縫いを、楽しみにお待ちください。


今回は、ANSNAMの新ラインをご紹介します。
MANNAS(マナス)
はい、文字を入れ替えただけのアナグラミングです。ANSNAMの元が、こちらなのですけれど。意味は、またいつか書きます。

このラインは、世界の名だたる名工達と、手を組み、共に作り上げたもの。
世界選抜と言っていい。アベンジャーズのレベルです。
本来ならば、その人の名前を冠したブランドネームを付けるべき存在感なのですが、
色々なブランドからの依頼を受けていたり、すでにお抱えで活躍していたり。
要は、大人の事情で、名前が出せない。
これが公になれば、きっと誰かが怒られる。




MANNASの第一弾はスラックスです。
ナポリ随一のハンドメイドのパンツ職人さん。
丁寧に、丁寧に、クセ取りされた立体的なシルエットと、驚くほどフィットする腰回り。
画像では分かりづらいのですが、腰回りは、尻ぐりの接ぎ線も含めて、手縫いです。
インナーのマーベルト付けや、パンチェリーナ仕様のパーツも、手。もちろんボタンホールも、手。
だからこそのフィット感。こればかりは履いてみないとわかりません。億劫かと思いますが、是非一度、試着をしてみて下さい。
(*専門用語の解説は省きます。ごめんなさい。詳しく知りたい方は、ご来店いただき、お気軽にご質問ください。または、ググって調べてください。)

今回作ったパンツは2素材のご用意があります。
一つはヘリンボーン織の、手触りはカシミアのようなコットン起毛。
彼の技術を存分にお楽しみいただけると思います。

もう一つは手縫いができるギリギリの、密度の高い、綿チノクロス。
こちらには、いつもの、ANSNAMの独自の製品洗いを施しております。生地の洗い縮率を計算し、それを見越したサイズで、作ってもらいました。洗うことは、職人さんには内緒。多分怒られます。
しかしこの、お互いの価値観の衝突が、MANNASを面白くさせて行きます。

ウールサージとウールトロピカルのサンプルもあります。
そう、オーダーメイド可能です。サイズ、シルエット、生地、仕様、お選び頂けます。

このパンツ工房は、ナポリの、入り組んだ迷路のような、雑多な下町の中にあります。
しかしこの職人さんは、イタリア南部の緩いイメージとは違う、ものすごく真面目な人です。納期もきっちり正確に。仕事に悩み、無理な仕事をして、身体を壊しちゃうような繊細さ。
まあ、私の逆と言っていい。

この職人さんは英語が喋れないので、実際のやり取りはその甥っ子なのですが、こいつはイメージ通りのナポリたん。チリスープのシーフードスパゲッティとピッツァマルゲリータで培われたお腹。不精なヒゲ。襟ぐりの伸びきったTシャツ。
まあ、私と共鳴したと言っていい。




素材は、この工房から徒歩10分ほどにある、Caccioppoliというナポリを拠点にしている1920年創業の生地メーカーで選び、マーベルトなどは、その近所にある今にも潰れそうな(ナポリという町自体が今にも潰れてしまいそうだが)副資材屋で購入しました。

この日は、過密スケジュールだったので、本当に駆け足で回りました。
にも関わらず生地屋では、漫画ワンピース好きの担当者が、自分のタトゥー(麦わらの一味の海賊旗)を見せびらかせながら、熱く話しかけて来るし、
副資材屋の元ヤンの中年夫婦は、16歳で子供を産み、今でもお互いに熱愛なんだ、という本当に、本当に、どうでもいい話を聞かされ、
工房に戻った時には、汗ダクダクでした。

そんな人達が暮らすナポリの片隅で、ひっそり丁寧に作られているハンドメイドのパンツ。
その縫い目は粗いです。
日本のきちんとした縫製に慣れている方は、きっと驚く事でしょう。
しかしこのパンツを見れば、美しさとは、その基準に於いて判断するものではないと、感じていただける事でしょう。
白黒写真で構成しましたが、アルチザン系ではありません。